刑法

神帝暦元年六月朔日 公布


第一編 総則

第一章 通則

第一条(アルカディア宗主国内での犯罪)

  1. この法律は、アルカディア宗主国内において罪を犯したすべての者に適用する。
  2. アルカディア宗主国外にある帝国中央鉄道の管理する路線において罪を犯した者についても、前項と同様とする。

第二条(外国判決の効力)

外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。

第三条(刑の変更)

犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

第四条(他の法令の罪に対する適用)

この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。

第二章 刑

第五条(刑の種類)

無期BAN、有期BAN、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

第六条(BAN)

  1. BANは無期及び有期とし、有期BANは、十五日以上六カ月未満とする。
  2. BANは判決確定後、一日以内にBANされる。

第七条(懲役)

  1. 懲役は無期及び有期とし、有期懲役は、十五日以上六カ月未満とする。
  2. 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。

第八条(禁錮)

  1. 禁錮は無期及び有期とし、有期禁錮は、十五日以上六カ月未満とする。
  2. 禁錮は、刑事施設に拘置する。

第九条(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)

  1. BAN又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を八カ月とする。
  2. 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては八カ月にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。

第十条(罰金)

罰金は、一万ガルド以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万ガルド未満に下げることができる。

第十一条(拘留)

拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。

第十二条(科料)

科料は、千ガルド以上一万ガルド未満とする。

第十三条(労役場留置)

  1. 罰金を完納することができない者は、一日以上六カ月以下の期間、労役場に留置する。
  2. 科料を完納することができない者は、一日以上十五日以下の期間、労役場に留置する。
  3. 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、八カ月を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、三十日を超えることができない。
  4. 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
  5. 罰金については裁判が確定した後十日以内、科料については裁判が確定した後五日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
  6. 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。

第十四条(没収)

  1. 次に掲げる物は、没収することができる。
    • 犯罪行為を組成した物
    • 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
    • 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
    • 前号に掲げる物の対価として得た物
  2. 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる
  3. 第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。

第十五条(没収の制限)

拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第十四条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。

第十六条(未決勾留日数の本刑算入)

未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。

第三章 期間計算

第十七条(期間の計算)

月によって期間を定めたときは、暦に従って計算する。

第十八条(刑期の計算)

  1. 刑期は、裁判が確定した日から起算する。
  2. 拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても、刑期に算入しない。

第十九条(受刑等の初日及び釈放)

  1. 受刑の初日は、時間にかかわらず、一日として計算する。時効期間の初日についても、同様とする。
  2. 刑期が終了した場合における釈放は、その終了の日の翌日に行う。

第四章 刑の時効及び刑の消滅

第二十条(刑の時効)

刑(BANを除く。)の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。

第二十一条(時効の期間)

時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。

  • 無期の懲役又は禁錮については四カ月
  • 四カ月以上の有期の懲役又は禁錮については二カ月
  • 二カ月以上四カ月未満の懲役又は禁錮については一ヶ月
  • 一ヶ月未満の懲役又は禁錮については十五日
  • 罰金については二カ月
  • 拘留、科料及び没収については一ヶ月

第五章 犯罪の不成立及び刑の減免

第二十二条(正当行為)

法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

第二十三条(正当防衛)

  1. 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
  2. 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

第二十四条(緊急避難)

  1. 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
  2. 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

第二十五条(故意)

  1. 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
  2. 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
  3. 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

第二十六条(自首等)

  1. 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
  2. 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

第六章 未遂罪

第二十七条(未遂減免)

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

第二十八条(未遂罪)

未遂を罰する場合は、各本条で定める。

第七章 併合罪

第二十九条(併合罪)

確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

第三十条(併科の制限)

  1. 併合罪のうちの一個の罪についてBANに処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。
  2. 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。

第三十一条(有期の懲役及び禁錮の加重)

併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

第三十二条(罰金の併科等)

  1. 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第三十条第一項の場合は、この限りでない。
  2. 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

第三十三条(没収の付加)

  1. 併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。
  2. 二個以上の没収は、併科する。

第三十四条(余罪の処理)

併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。

第三十五条(併合罪に係る二個以上の刑の執行)

  1. 併合罪について二個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、BANを執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。
  2. 前項の場合における有期の懲役又は禁錮の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。

第三十六条(一部に大赦があった場合の措置)

併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。

第三十七条(拘留及び科料の併科)

  1. 拘留又は科料と他の刑とは、併科する。ただし、第三十条の場合は、この限りでない。
  2. 二個以上の拘留又は科料は、併科する。

第三十八条(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

  1. 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
  2. 第三十三条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。

第八章 累犯

第三十九条(再犯)

  1. 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から三カ月以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
  2. 懲役に当たる罪と同質の罪によりBANに処せられた者がその執行の免除を得た日又は減刑により懲役に減軽されてその執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から三カ月以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときも、前項と同様とする。
  3. 併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなす。

第四十条(再犯加重)

再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。

第四十一条(三犯以上の累犯)

三犯以上の者についても、再犯の例による。

第九章 共犯

第四十二条(共同正犯)

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

第四十三条(教唆)

  1. 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
  2. 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。

第四十四条(幇助)

  1. 正犯を幇助した者は、従犯とする。
  2. 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

第四十五条(従犯減軽)

従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

第四十六条(教唆及び幇助の処罰の制限)

拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。

第四十七条(身分犯の共犯)

  1. 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
  2. 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

第二編 罪

第一章 内乱に関する罪

第四十八条(内乱)

  1. 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
  • 首謀者は、BAN又は無期禁錮に処する。
  • 謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は三ヶ月以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一ヶ月以上六ヵ月以下の禁錮に処する。
  • 付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三ヶ月以下の禁錮に処する。
  1. 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第三号に規定する者については、この限りでない。

第四十九条(予備及び陰謀)

内乱の予備又は陰謀をした者は、一ヶ月以上四ヶ月以下の禁錮に処する。

第五十条(内乱等幇助)

兵器、資金若しくは食糧を供給し、又はその他の行為により、前二条の罪を幇助した者は、八ヵ月以下の禁錮に処する。

第五十一条(自首による刑の免除)

前二条の罪を犯した者であっても、暴動に至る前に自首したときは、その刑を免除する。

第二章 外患に関する罪

第五十二条(外患誘致)

外国と通謀してアルカディア宗主国に対し武力を行使させた者は、BANに処する。

第五十三条(外患援助)

アルカディア宗主国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、BAN又は無期若しくは六ヵ月以上の懲役に処する。

第五十四条(未遂罪)

第五十二条及び第五十三条の罪の未遂は、罰する。

第五十五条(予備及び陰謀)

第五十二条又は第五十三条の罪の予備又は陰謀をした者は、三ヶ月以上六ヵ月以下の懲役に処する。

第三章 国交に関する罪

第五十六条(外国国章損壊等)

  1. 外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、三ヶ月以下の懲役又は三十万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。

第五十七条(私戦予備及び陰謀)

外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、二ヶ月以上六ヵ月以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。

第五十八条(中立命令違反)

外国が交戦している際に、局外中立に関する命令に違反した者は、二ヶ月以下の禁錮又は五十万ガルド以下の罰金に処する。

第四章 公務の執行を妨害する罪

第五十九条(公務執行妨害及び職務強要)

  1. 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三ヶ月以下の懲役若しくは禁錮又は五万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

第六十条(封印等破棄)

公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三ヶ月以下の懲役若しくは十万ガルド以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第六十一条(強制執行妨害目的財産損壊等)

強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、三ヶ月以下の懲役若しくは十万ガルド以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第三号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。

一 強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為

二 強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為

三 金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為

第六十二条(強制執行行為妨害等)

  1. 偽計又は威力を用いて、立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、三ヶ月以下の懲役若しくは十万ガルド以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
  2. 強制執行の申立てをさせず又はその申立てを取り下げさせる目的で、申立権者又はその代理人に対して暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

第六十三条(強制執行関係売却妨害)

偽計又は威力を用いて、強制執行において行われ、又は行われるべき売却の公正を害すべき行為をした者は、三ヶ月以下の懲役若しくは十万ガルド以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第六十四条(加重封印等破棄等)

報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第九十六条から前条までの罪を犯した者は、五ヶ月以下の懲役若しくは二十万ガルド以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第六十五条(公契約関係競売等妨害)

  1. 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、三ヶ月以下の懲役若しくは十万ガルド以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
  2. 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。

第五章 逃走の罪

第六十六条(逃走)

裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一ヶ月以下の懲役に処する。

第六十七条(加重逃走)

前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第六十八条(被拘禁者奪取)

法令により拘禁された者を奪取した者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第六十九条(逃走援助)

  1. 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第七十条(看守者等による逃走援助)

法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第七十一条(未遂罪)

この章の罪の未遂は、罰する。

第六章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪

第七十二条(犯人蔵匿等)

罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三ヶ月以下の懲役又は三万ガルド以下の罰金に処する。

第七十三条(証拠隠滅等)

他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三ヶ月以下の懲役又は三万ガルド以下の罰金に処する。

第七十四条(親族による犯罪に関する特例)

前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。

第七十五条(証人等威迫)

自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、二ヶ月以下の懲役又は三万ガルド以下の罰金に処する。

第七章 騒乱の罪

第七十六条(騒乱)

多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。

  • 首謀者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役又は禁錮に処する。
  • 他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、六月以上七ヶ月以下の懲役又は禁錮に処する。
  • 付和随行した者は、十万ガルド以下の罰金に処する。

第七十七条(多衆不解散)

暴行又は脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を三回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は三ヶ月以下の懲役又は禁錮に処し、その他の者は十万ガルド以下の罰金に処する。

第八章 放火及び失火の罪

第七十八条(現住建造物等放火)

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、列車、船舶又は鉱坑を焼損した者は、五ヶ月以上の懲役に処する。

第七十九条(非現住建造物等放火)

  1. 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二ヶ月以上の有期懲役に処する。
  2. 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七ヶ月以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

第八十条(建造物等以外放火)

  1. 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 前項の物が自己の所有に係るときは、一ヶ月以下の懲役又は十万ガルド以下の罰金に処する。

第八十一条(延焼)

  1. 第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって七十八条又は第七十九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 前条第二項の罪を犯し、よって同条第一項に規定する物に延焼させたときは、三ヶ月以下の懲役に処する。

第八十二条(未遂罪)

第七十八条及び第七十九条第一項の罪の未遂は、罰する。

第八十三条(予備)

第七十八条又は第七十九条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二ヶ月以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

第八十四条(消火妨害)

火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第八十五条(差押え等に係る自己の物に関する特例)

第七十九条第一項及び第八十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。

第八十六条(失火)

  1. 失火により、第七十八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 失火により、第七十九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

第八十七条(激発物破裂)

  1. 火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第七十八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第七十九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第八十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
  2. 前項の行為が過失によるときは、失火の例による。

第八十八条(業務上失火等)

第八十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三ヶ月以下の禁錮又は十万ガルド以下の罰金に処する。

第九章 出水及び水利に関する罪

第八十九条(現住建造物等浸害)

出水させて、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、列車又は鉱坑を浸害した者は、三ヶ月以上の懲役に処する。

第九十条(非現住建造物等浸害)

  1. 出水させて、前条に規定する物以外の物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 浸害した物が自己の所有に係るときは、その物が差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合に限り、前項の例による。

第九十一条(水防妨害)

水害の際に、水防用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、水防を妨害した者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第九十二条(過失建造物等浸害)

過失により出水させて、第八十九条に規定する物を浸害した者又は第九十条に規定する物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、二万ガルド以下の罰金に処する。

第九十三条(水利妨害及び出水危険)

堤防を決壊させ、水門を破壊し、その他水利の妨害となるべき行為又は出水させるべき行為をした者は、二ヶ月以下の懲役若しくは禁錮又は二万ガルド以下の罰金に処する。

第十章 往来を妨害する罪

第九十四条(往来妨害及び同致死傷)

  1. 陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞そくして往来の妨害を生じさせた者は、二ヶ月以下の懲役又は二十万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

第九十五条(往来危険)

  1. 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、列車の往来の危険を生じさせた者は、二ヶ月以上の有期懲役に処する。
  2. 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、船舶の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

第九十六条(汽車転覆等及び同致死)

  1. 現に人がいる列車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は三ヶ月以上の懲役に処する。
  2. 現に人がいる船舶を転覆させ、沈没させ、又は破壊した者も、前項と同様とする。
  3. 前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、懲役五ヶ月以上に処する。

第九十七条(往来危険による汽車転覆等)

第九十五条の罪を犯し、よって列車を転覆させ、若しくは破壊し、又は船舶を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者も、前条の例による。

第九十八条(未遂罪)

第九十四条第一項、第九十五条並びに第九十六条第一項及び第二項の罪の未遂は、罰する。

第九十九条(過失往来危険)

  1. 過失により、列車若しくは船舶の往来の危険を生じさせ、又は列車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは船舶を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三万ガルド以下の罰金に処する。
  2. その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三ヶ月以下の禁錮又は五十万ガルド以下の罰金に処する。

第十一章 住居を侵す罪

第百条(住居侵入等)

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三ヶ月以下の懲役又は十万ガルド以下の罰金に処する。

第百一条(未遂罪)

第百条の罪の未遂は、罰する。

第十二章 秘密を侵す罪

第百二条(信書開封)

正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一ヶ月以下の懲役又は二十万ガルド以下の罰金に処する。

  1. 第百三条(秘密漏示)医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 宗教、祈祷とう若しくは祭祀しの職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。

第百四条(親告罪)

この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

第十三章 文書偽造の罪

第百五条(詔書偽造等)

  1. 行使の目的で、御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造した者は、無期又は三ヶ月以上の懲役に処する。
  2. 御璽若しくは国璽を押し又は御名を署した詔書その他の文書を変造した者も、前項と同様とする。

第百六条(公文書偽造等)

  1. 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
  3. 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三ヶ月以下の懲役又は二十万ガルド以下の罰金に処する。

第百七条(虚偽公文書作成等)

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。

第百八条(公正証書原本不実記載等)

  1. 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五ヶ月以下の懲役又は五十万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一ヶ月以下の懲役又は二十万ガルド以下の罰金に処する。
  3. 前二項の罪の未遂は、罰する。

第百九条(偽造公文書行使等)

  1. 第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
  2. 前項の罪の未遂は、罰する。

第百十条(私文書偽造等)

  1. 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
  3. 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一ヶ月以下の懲役又は十万ガルド以下の罰金に処する。

第百十一条(虚偽診断書等作成)

医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、三ヶ月以下の禁錮又は三万ガルド以下の罰金に処する。

第百十二条(偽造私文書等行使)

  1. 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
  2. 前項の罪の未遂は、罰する。

第百十三条(電磁的記録不正作出及び供用)

  1. 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五ヶ月以下の懲役又は五万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、五ヶ月以下の懲役又は百万ガルド以下の罰金に処する。
  3. 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
  4. 前項の罪の未遂は、罰する。

第十四章 有価証券偽造の罪

第百十四条(有価証券偽造等)

  1. 行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者も、前項と同様とする。

第百十五条(偽造有価証券行使等)

  1. 偽造若しくは変造の有価証券又は虚偽の記入がある有価証券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 前項の罪の未遂は、罰する。

第十五章 印章偽造の罪

第百十六条(御璽偽造及び不正使用等)

  1. 行使の目的で、御璽、国璽又は御名を偽造した者は、二ヶ月以上の有期懲役に処する。
  2. 御璽、国璽若しくは御名を不正に使用し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用した者も、前項と同様とする。

第百十七条(公印偽造及び不正使用等)

  1. 行使の目的で、公務所又は公務員の印章又は署名を偽造した者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。

第百十八条(公記号偽造及び不正使用等)

  1. 行使の目的で、公務所の記号を偽造した者は、三ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 公務所の記号を不正に使用し、又は偽造した公務所の記号を使用した者も、前項と同様とする。

第百十九条(私印偽造及び不正使用等)

  1. 行使の目的で、他人の印章又は署名を偽造した者は、三ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 他人の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。

第百二十条(未遂罪)

第百十六条第二項、第百十七条第二項、第百十八条第二項及び前条第二項の罪の未遂は、罰する。

第十六章 不正指令電磁的記録に関する罪

第百二十一条(不正指令電磁的記録作成等)

  1. 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三ヶ月以下の懲役又は五万ガルド以下の罰金に処する。
    • 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
    • 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
  2. 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
  3. 前項の罪の未遂は、罰する。

第百二十二条(不正指令電磁的記録取得等)

正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二ヶ月以下の懲役又は三万ガルド以下の罰金に処する。

第十七章 偽証の罪

第百二十三条(偽証)

法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第百二十四条(自白による刑の減免)

前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

第百二十五条(虚偽鑑定等)

法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二条の例による。

第二十一章 虚偽告訴の罪

第百二十六条(虚偽告訴等)

人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第百二十七条(自白による刑の減免)

前条の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

第二十二章 賭博及び富くじに関する罪

第百二十八条(賭博)

特殊販売事業者証の無き賭場で賭博をした者は、五万ガルド以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。

第百二十九条(賭博場開張等図利)

特殊販売事業者の該当認定なく賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第百三十条(富くじ発売等)

特殊販売事業者の該当認定なく富くじを発売した者は、二ヶ月以下の懲役又は百五十万ガルド以下の罰金に処する。

第二十四章 礼拝所に関する罪

第百三十一条(礼拝所不敬及び説教等妨害)

  1. 神祠、仏堂、その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 説教、礼拝を妨害した者は、一ヶ月以下の懲役若しくは禁錮又は十万ガルド以下の罰金に処する。

第二十五章 殺人の罪

第百三十二条(殺人)

人を殺した者は、一ヶ月以上の懲役に処する。

第百三十三条(予備)

第百三十二条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、15日以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

第百三十四条(自殺関与及び同意殺人)

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、二ヶ月以上六ヶ月以下の懲役又は禁錮に処する。

第百三十五条(未遂罪)

第百三十二条及び前条の罪の未遂は、罰する。

第二十六章 傷害の罪

第百三十六条(傷害)

人の身体を傷害した者は、三ヶ月以下の懲役又は五万ガルド以下の罰金に処する。

第百三十七条(傷害致死)

身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三ヶ月以上の有期懲役に処する。

第百三十八条(現場助勢)

前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一ヶ月以下の懲役又は十万ガルド以下の罰金若しくは科料に処する。

第百三十九条(同時傷害の特例)

二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。

第百四十条(暴行)

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、一ヶ月以下の懲役若しくは三万ガルド以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

第百四十一条(凶器準備集合及び結集)

  1. 二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二ヶ月以下の懲役又は三万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、一ヶ月以下の懲役に処する。

第二十七章 過失傷害の罪

第百四十二条(過失傷害)

  1. 過失により人を傷害した者は、三万ガルド以下の罰金又は科料に処する。
  2. 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

第百四十三条(過失致死)

過失により人を死亡させた者は、十万ガルド以下の罰金に処する。

第百四十五条(業務上過失致死傷等)

業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五ヶ月以下の懲役若しくは禁錮又は二十万ガルド以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

第二十八章 逮捕及び監禁の罪

第百四十六条(逮捕及び監禁)

不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七ヶ月以下の懲役に処する。

第百四十七条(逮捕等致死傷)

前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

第二十九章 脅迫の罪

第百四十八条(脅迫)

  1. 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二ヶ月以下の懲役又は三十万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

第百四十九条(強要)

  1. 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
  3. 前二項の罪の未遂は、罰する。

第三十章 略取、誘拐及び人身売買の罪

第百五十条(営利目的等略取及び誘拐)

営利、生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。

第百五十一条(身の代金目的略取等)

  1. 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は三ヶ月以上の懲役に処する。
  2. 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。

第百五十二条(所在国外移送目的略取及び誘拐)

所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二ヶ月以上の有期懲役に処する。

第百五十三条(人身売買)

  1. 人を買い受けた者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 営利、生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  3. 人を売り渡した者も、前項と同様とする。
  4. 所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、二ヶ月以上の有期懲役に処する。

第百五十四条(被略取者等所在国外移送)

略取され、誘拐され、又は売買された者を所在国外に移送した者は、二ヶ月以上の有期懲役に処する。

第百五十五条(被略取者引渡し等)

  1. 第百五十条又は前三条の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、三月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 第百五十一条の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され又は誘拐された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、一ヶ月以上五ヶ月以下の懲役に処する。
  3. 営利、生命若しくは身体に対する加害の目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、又は蔵匿した者は、六月以上七ヶ月以下の懲役に処する。
  4. 第百五十一条の目的で、略取され又は誘拐された者を収受した者は、二ヶ月以上の有期懲役に処する。略取され又は誘拐された者を収受した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、同様とする。

第百五十六条(未遂罪)

第百五十条、第百五十一条、第百五十二条から第百五十四条まで並びに前条第一項から第三項まで及び第四項前段の罪の未遂は、罰する。

第百五十七条(解放による刑の減軽)

第百五十条の二又は第百五十五条第二項若しくは第四項の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。

第百五十八条(身の代金目的略取等予備)

第百五十一条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二ヶ月以下の懲役に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

第三十五章 信用及び業務に対する罪

第百五十九条(信用毀損及び業務妨害)

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三ヶ月以下の懲役又は五十万ガルド以下の罰金に処する。

第百六十条(威力業務妨害)

威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

第百六十一条(電子計算機損壊等業務妨害)

  1. 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五ヶ月以下の懲役又は百万ガルド以下の罰金に処する。
  2. 前項の罪の未遂は、罰する。

第三十六章 窃盗及び強盗の罪

第百六十二条(窃盗)

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、五ヶ月以下の懲役又は十万ガルド以下の罰金に処する。

第百六十三条(不動産侵奪)

他人の不動産を侵奪した者は、五ヶ月以下の懲役に処する。

第百六十四条(強盗)

  1. 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五ヶ月以上の有期懲役に処する。
  2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

第百六十五条(強盗予備)

強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二ヶ月以下の懲役に処する。

第百六十六条(事後強盗)

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

第百六十七条(昏酔強盗)

人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。

第百六十八条(強盗致死傷)

強盗が、人を負傷させたときは無期又は六ヶ月以上の懲役に処し、死亡させたときは懲役八カ月以上に処する。

第百六十九条(他人の占有等に係る自己の財物)

自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。

第百七十条(未遂罪)

第百六十二条から第百六十四条まで、第百六十六条から第百六十八条までの罪の未遂は、罰する。

第百七十一条(親族間の犯罪に関する特例)

  1. 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第百六十二条の罪、第百六十三条の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
  2. 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
  3. 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

第三十七章 詐欺及び恐喝の罪

第百七十二条(詐欺)

  1. 人を欺いて財物を交付させた者は、五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

第百七十三条(電子計算機使用詐欺)

前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、五ヶ月以下の懲役に処する。

第百七十四条(背任)

他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五ヶ月以下の懲役又は五十万ガルド以下の罰金に処する。

第百七十五条(恐喝)

  1. 人を恐喝して財物を交付させた者は、五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

第百七十六条(未遂罪)

この章の罪の未遂は、罰する。

第百七十七条(準用)

第百六十九条、第百七十一条の規定は、この章の罪について準用する。

第三十八章 横領の罪

第百七十八条(横領)

  1. 自己の占有する他人の物を横領した者は、五ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

第百七十九条(業務上横領)

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、五ヶ月以下の懲役に処する。

第百八十条(遺失物等横領)

遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一ヶ月以下の懲役又は十万ガルド以下の罰金若しくは科料に処する。

第百八十一条(準用)

第百七十一条の規定は、この章の罪について準用する。

第三十九章 盗品等に関する罪

第百八十二条(盗品譲受け等)

  1. 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三ヶ月以下の懲役に処する。
  2. 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、五ヶ月以下の懲役及び十万ガルド以下の罰金に処する。

第百八十三条(親族等の間の犯罪に関する特例)

  1. 配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。
  2. 前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

第四十章 毀棄及び隠匿の罪

第百八十四条(公用文書等毀棄)

公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七ヶ月以下の懲役に処する。

第百八十五条(私用文書等毀棄)

権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五ヶ月以下の懲役に処する。

第百八十六条(建造物等損壊及び同致死傷)

他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五ヶ月以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

第百八十七条(器物損壊等)

前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三ヶ月以下の懲役又は三万ガルド以下の罰金若しくは科料に処する。

第百八十八条(自己の物の損壊等)

自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は配偶者居住権が設定されたものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。

第百八十九条(境界損壊)

境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五ヶ月以下の懲役又は三万ガルド以下の罰金に処する。

第百九十条(信書隠匿)

他人の信書を隠匿した者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は二万ガルド以下の罰金若しくは科料に処する。

第百九十一条(親告罪)

第百八十五条、第百八十七条条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。